総論
クッシング症候群は、内因性コルチゾールの慢性過剰分泌による疾患群である。最多はACTH産生下垂体腺腫によるクッシング病。医原性(外因性ステロイド)は最もよく見られるが、国試では内因性を問うことがほとんど。
分類
| 分類 | 原因 | ACTH | 頻度 |
|---|---|---|---|
| クッシング病 | ACTH産生下垂体腺腫 | ↑ | 〜70% |
| 異所性ACTH産生腫瘍 | 小細胞肺癌・カルチノイドなど | ↑↑ | 〜15% |
| 副腎腺腫 | 自律性コルチゾール産生 | ↓(抑制) | 〜10% |
| 副腎癌 | 自律性コルチゾール産生 | ↓(抑制) | 〜5% |
臨床像
コルチゾール過剰は多彩な代謝異常をもたらす。国試では典型的な身体所見の組み合わせで診断を問う問題が多い。
| 所見 | 機序 |
|---|---|
| 中心性肥満・満月様顔貌(月面様) | 脂肪再分布 |
| 野牛肩(buffalo hump) | 頸背部への脂肪蓄積 |
| 皮膚線条(紫色、幅広い) | 皮膚萎縮・コラーゲン減少 |
| 高血圧・浮腫 | 鉱質コルチコイド様作用 |
| 高血糖・糖尿病 | 糖新生亢進・インスリン抵抗性 |
| 骨粗鬆症・骨折 | 骨芽細胞抑制・破骨細胞促進 |
| 多毛・痤瘡・月経不順 | 副腎アンドロゲン過剰 |
| 筋力低下(近位筋優位) | タンパク異化亢進 |
| 免疫抑制・易感染性 | T細胞・好中球機能低下 |
| うつ・精神症状 | 海馬MR/GR活性異常 |
診断
3段階で進める。①コルチゾール過剰の証明(スクリーニング)→ ②ACTH依存性 / 非依存性の鑑別(病型鑑別)→ ③クッシング病 / 異所性ACTH産生腫瘍の鑑別(下垂体性 vs 異所性)。 各段階は目的が異なるため、検査の位置づけを混同しないこと。
コルチゾール過剰の証明には以下を組み合わせて判断する。 ①デキサメサゾン抑制試験、 ②24時間尿中遊離コルチゾール(UFC)、 ③深夜唾液コルチゾール(日内リズム消失の確認)。 単一検査ではなく、複数陽性をもって評価する。
※ デキサメサゾン抑制試験には 1 mg 単回夜間法・0.5 mg 法・2 mg 法 などがあり、投与量や判定基準(例:翌朝血中コルチゾール > 1.8 μg/dL)は文献により異なる。国試では 1 mg 法が扱われることが多いが、日本の診断の手引きでは 0.5 mg 法の文脈も重要。
血中ACTH測定が鍵。ACTH低値(≤5 pg/mL)なら副腎原性(ACTH非依存性)→ 副腎CT。 ACTH正常〜高値なら下垂体性または異所性(ACTH依存性)→ 次ステップへ。
デキサメサゾン8 mg投与後、血中コルチゾールが50%以上抑制されればクッシング病を示唆し(下垂体腺腫は高用量でなお抑制される)、抑制されなければ異所性ACTH産生腫瘍を疑う。 ただし本試験単独では確定せず、下垂体MRI、鑑別困難例では両側下錐体静脈サンプリング(IPSS)を併用して確定する。
治療
- クッシング病 — 経蝶形骨洞的下垂体腺腫摘除術(TSS)が第一選択。再発・非治癒例には放射線治療または両側副腎摘除術。
- 副腎腺腫 — 腹腔鏡下副腎摘除術。術後は対側副腎抑制のため数か月〜1年のステロイド補充が必要。
- 異所性ACTH産生腫瘍 — 原発腫瘍切除。切除不能例ではメチラポン・ケトコナゾールなどのコルチゾール合成阻害薬。
- 副腎癌 — 手術 + ミトタン(o,p′-DDD)。予後不良。
過去問
副腎腺腫による Cushing 症候群で認めないのはどれか。
- a円形顔貌
- b眼瞼浮腫
- c骨粗鬆症
- d色素沈着
- e皮膚線条
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正解:d
3 歳の男児。急激な体重増加を主訴に父親に連れられて来院した。身長 98 cm、体重 19 kg。体温 36.5 ℃。脈拍 120/分、整。血圧 136/88 mmHg。呼吸数 28/分。SpO2 100 %(room air)。肥満あり。顔面、頸部、体幹および背部を中心に脂肪の蓄積を認めるが、上下肢は細い。全身の多毛と下腹部の皮膚線条とを認める。血液生化学所見:血糖 122 mg/dL、HbA1c 5.7 %(基準 4.6〜6.2)、総コレステロール 332 mg/dL、トリグリセリド 257 mg/dL、Na 143 mEq/L、K 3.6 mEq/L、Cl 105 mEq/L、Ca 9.4 mg/dL、P 3.7 mg/dL、ACTH <1.5 pg/mL(基準 60 以下)、コルチゾール 26.1 μg/dL(基準 5.2〜12.6)。
この患児の病態を生じる基礎疾患として最も考えられるのはどれか。
- a甲状腺腫
- b副腎腺腫
- c下垂体腺腫
- d褐色細胞腫
- e副甲状腺腫
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正解:b