総論
副腎不全は副腎皮質ホルモン(コルチゾール・アルドステロン・副腎アンドロゲン)が慢性的に不足する状態。1855年にThomas Addisonが記載したAddison病(一次性副腎不全)が最も有名。本邦では自己免疫性副腎炎が最多原因(約80%)。
一次性 vs 二次性
| 項目 | 一次性(Addison病) | 二次性(ACTH欠乏) |
|---|---|---|
| 病変部位 | 副腎皮質 | 下垂体・視床下部 |
| 主な原因 | 自己免疫性、結核、出血 | 長期ステロイド投与、下垂体腫瘍 |
| ACTH | ↑↑(代償性上昇) | ↓ |
| コルチゾール | ↓ | ↓ |
| アルドステロン | ↓(鉱質コルチコイドも欠乏) | 正常(RAA系は保たれる) |
| Na/K | 低Na・高K | 低Na(軽度)のみ |
| 色素沈着 | あり(ACTH↑→MSH↑) | なし |
臨床像
- 全身倦怠感・易疲労感 — 最も頻度の高い愁訴
- 食欲不振・体重減少・悪心 — 糖新生低下・GI症状
- 低血圧・起立性低血圧 — コルチゾール・アルドステロン欠乏による
- 低血糖 — 糖新生低下、インスリン拮抗作用の消失
- 低Na・高K血症(一次性) — アルドステロン欠乏による
- 色素沈着(一次性) — 皮膚・粘膜・手掌線条・瘢痕・乳輪に好発
- 無力症・筋力低下 — 電解質異常・蛋白異化
副腎クリーゼ
慢性副腎不全患者が感染・外傷・手術・精神的ストレスなどのストレス下に置かれ、コルチゾール需要が急増したときに発症する急性副腎不全。診断を待たずに治療を開始することが原則。
シックデイルール:慢性副腎不全患者は発熱・下痢・嘔吐などの際は平常量の2〜3倍のヒドロコルチゾンを内服するよう患者教育を行う。嘔吐して内服困難な場合は自己注射または医療機関受診を指示する。
診断
早朝(8時)の血中コルチゾール測定。<3 μg/dLで副腎不全を強く示唆。>18 μg/dLで実質的に除外。
合成ACTH(コートロシン)250 μgを静注し、30・60分後のコルチゾールを測定。最高値≥18 μg/dLを正常反応とし、これを下回る場合に副腎不全と診断。一次性・二次性の確定にはACTH基礎値も参考にする。
一次性:副腎CT(両側副腎萎縮 or 結核性石灰化)、21-水酸化酵素抗体など。二次性:下垂体MRI、他の下垂体ホルモン測定。
治療
- コルチゾール補充 — ヒドロコルチゾン15〜25 mg/日(分2〜3、朝多め)。コルチゾンアセテートでも可。
- 鉱質コルチコイド補充(一次性のみ) — フルドロコルチゾン0.05〜0.2 mg/日。低Na・高K・低血圧の改善を目標。二次性ではアルドステロン分泌は保たれるため不要。
- シックデイルール — 発熱・手術・外傷時は通常量の2〜3倍に増量。嘔吐時は筋注または点滴に切り替え。
- 患者教育 — 副腎不全カードの携帯、自己注射の指導、ステロイド投与歴の医療者への申告。
過去問
52 歳の男性。全身倦怠感を主訴に来院した。6 週間前に進行肺腺癌と診断され、4 週間前に免疫チェックポイント阻害薬による初回治療を受けた。全身倦怠感が出現したため受診した。意識は清明であるが受け答えは緩慢である。体温 36.8 ℃。脈拍 108/分、整。血圧 72/50 mmHg。呼吸数 20/分。SpO2 97 %(room air)。軽度腫大した甲状腺を触知する。血液所見:赤血球 320 万、Hb 12.0 g/dL、Ht 38 %。血液生化学所見:血糖 104 mg/dL、TSH 0.1 μU/mL(基準 0.2〜4.0)、ACTH 2.0 pg/mL(基準 60 以下)、FT4 1.8 ng/dL(基準 0.8〜2.2)、コルチゾール 0.1 μg/dL(基準 5.2〜12.6)であった。胸部エックス線写真で原発巣の縮小を認める。甲状腺超音波検査では軽度の甲状腺腫大以外は異常を認めない。
治療として適切なのはどれか。
- a赤血球輸血
- bインスリン投与
- c殺細胞性抗癌薬投与
- d甲状腺ホルモン投与
- e副腎皮質ステロイド投与
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正解:e
食思不振により体重が減少するのはどれか。2 つ選べ。
- a糖尿病
- b副腎不全
- c褐色細胞腫
- dBasedow 病
- e副甲状腺機能亢進症
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正解:b・c